赤羽の集合住宅

Tokyo / akabane / 2011 - 2014

用途

共同住宅 / 店舗

構造

株式会社 MID研究所

構造協力

ミサワホーム総合研究所

東京大学生産技術研究所腰原研究室

設備

長谷川設備計画

照明

株式会社フォーライツ

施工

株式会社 スリーエフ

ミサワホーム(木質接着複合パネル供給)

テクノエフアンドシー(同パネル工事)

撮影

淺川敏

掲載

2015.08 日経アーキテクチュア

2015.03 ディティール

2015.02 新建築

2015.01 放夢新聞

2015.01 週刊住宅

2014.08 住宅産業新聞

2014.07 住まいとでんき

2014.06 日経アーキテクチュア

2014.03 新建築

2014.02 日刊木材新聞

2013.12 日刊建設産業新聞

2013.06 日経産業新聞

 JR赤羽駅から徒歩7,8分、戸建住宅や中層ビルが混在する防火地域に建つ木造4階建ての店舗併用共同住宅である。1階店舗と10~15戸の賃貸ワンルームというプログラムで、木造4階建てが可能ならばぜひ木造で、というクライアントの要望から設計がスタートした。
地盤の軟弱な地域であり、木造化は杭・基礎工事のコストメリットがあるものの、1階店舗を広々と作るには、高耐力・高強度な荷重支持部材が必要である。そこでミサワホームグループが開発して間もないFWS構法の採用に挑戦することとなった。FWSの壁式構造・4階建て耐火建築物はミサワホームとしても初の試みであり、一方、私達設計チームにとっては、ハウスメーカー独自の建材や構法を用いて設計するのは初めてのこと。設計・施工を通じて、時間をかけて互いに「異文化」への理解を深めていった。高性能な木質接着パネルの活用を限定せず、広く一般の設計者・施工者にも利用可能なものとして<オープンな新しい仕組み>を構築することが、このプロジェクトのもう一つの目標でもあった。
共同住宅部分は2,3,4階で12戸のワンルームが井桁状に中央の階段室を囲む構成で、窓先空地の裏庭が街区の内側に光や風を導く中庭の役割も果たしている。高強度な木質パネルによって大きな開口を多数設けることが可能となり、どの住戸も2,3方向の窓から充分な明るさと風通しが得られる。構造・設備計画上、同じプランの積層から大きく逃れられないのだが、大きな出窓をランダムに設けることで、同じユニットが集積するワンルームマンションではなく、異なる個性を持った部屋の集まりとして見えることを意識した。躯体の木質パネルは耐火被覆によって隠れてしまうため、パネルの材料として多用される北海道産トドマツを、床と出窓越しに外から見える壁柱の仕上げ用いている。開口部の工夫や無垢材が使われていることで、一般的な貸室とはかなり質の異なる内部空間となった。
ハイサイドの光が差し込む明るい階段室を上下すると、玄関のガラス扉ごしに垣間見える住まいの様子と、大きな窓の向こうの都市の風景が、交互に目に入る。鉄扉で遮断された「個」の集合としないこと、小さくとも豊かな共用空間を住人や地域に向かってひらくことで、自然で温かい交流が生まれる場が育まれていってほしいと願っている。

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